軒を争う

【漢字】軒を争う
【読み】のきをあらそう
【意味】密集して建ち並んでいる様子。
【例文1】軒が争う所は日当たりが悪いからやめとこう。
【例文2】丘の上に豪邸が軒を争う。
【例文3】ケーキ屋が軒を争う。

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「軒を争う」人々の陰の努力

「軒を争う」は「家の軒と軒が接近して家が建て込んでいる様子、軒を連ねる」という意味です。鴨長明の「方丈記」に「軒を争いしひとのすまひ」とか「甍を争へる、高き賤しきひとのすまひ」などの記述があり、当時の京都の家並みがかなり建て込んでいたことがわかります。鴨長明は当時起こった大地震や大火、大つむじ風により人が亡くなったり、家々が倒壊するのを目の当たりにし、無常の思いを表現したのが「方丈記」です。

当時はもちろんどの家も平屋でしたから軒も甍も争いましたが、現代では事情が違います。普通の家でも3階建て、4階建ても増えてきました。そんな中、東京の銀座ではある取り組みが行われてきました。銀座の地区ルールです。銀座では空が解放感を演出するようにと景観に気づかい、歌舞伎座などの一部を除きビルの高さを56mまでに制限しているのです。銀座の町会である全銀座会が中央区と連携して決められたもので、先ごろオープンしたギンザシックスも56mを守っています。銀座が空を借景として守った気質をそれぞれの店舗が大事にしていて、ギンザシックスでは日本の伝統的なひさしや暖簾をイメージした外観になっておりますし、ガルティエ銀座ブティックでは日本の組子を採用し、外観は障子のようにも見えます。東急プラザ銀座では夜間の照明を上の階に行くにつれて暗くなるように設定したそうで、まるで建物が空に溶け込んでいくように見えます。銀座のそぞろ歩きが「銀ブラ」として定着し、現在まで変わらぬ憧れの街であり続けるのも、「軒を争う」人々の知られざる努力がなせる業なのです。